『千歳くんはラムネ瓶のなか』と向き合ってみた。━━散りばめられたワードとフレーズ━━
ありったけ。
千歳くんはラムネ瓶のなか 5 - ライトノベル(ラノベ) 裕夢/raemz(ガガガ文庫):電子書籍試し読み無料 - BOOK☆WALKER -
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まず初めに、「笑顔」がめちゃくちゃ出てきます。「にっ」「くしゃっと」このふたつはめちゃくちゃ大事。それと「隣」
『千歳くんはラムネ瓶のなか』━━お願い、笑って━━ - みうみんのラノベ(深読み)屋さん
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明日姉からいこうか。
「━━だから少女たちは、いつまでも終わらせたくない時間をきれいな三角形に重ねた」(5巻 p.51)
この言葉をどうか忘れないでほしい。
明日姉がくしゃっと笑った。(p.52)
高校で出会ったふたりの過ごしてきた時間は、いつだってこんなふうだった。
茶化そうとした朔、でもやめた。そしてちゃんと心からの笑顔の明日姉。高校といういまを見ている朔。
ただ話をしているだけでいい。
そう思える初恋だった。(p.52)
ただそれだけ。
「━━たとえば初恋のあとに訪れる二度目の恋みたいに」(p.58)
君の顔は見られなかった。
「たとえば毎年訪れるインフルエンザの注射みたいに?」
ぷいっとわざとらしくそっぽを向く。
目をそらしながら。でも明日姉は気づいている。悟っている。
私がこんなふうに、まるで小説みたいに話せる場所は、君の隣なんだよ?(p.59)
明日姉は隣と、隣がいいと思っている。
でも、千歳朔の言葉にはそれがない。
どこまでも、どこまでも交わらない平行線。
呼び方も変わる。明日姉が昔みたいにするから。朔も付き合う。
俺はなんだか君の顔を真っ直ぐに見ていることが苦しくて、ぺりぺりと包みを剥がし真っ白なおむすびにかぶりつく。
わけもなく泣き出してしまいそうな声で、君(明日姉)が言う。
「おむすびも、三角形だね」(p.71)
君(過去の明日姉)が見てられなくて目をそらす。そして三角形を崩す。ふたりで。もう戻らない。
最初で最後の、お隣さんでいよう。
どうせすぐに、席替えのくじが回ってきてしまうんだから。(p.292)
きっとって希望を抱いてたはずなのに、どうせって諦めた。
"名前'で呼び合うふたり。(本当にそんな関係なのは夕湖とだけ。優空は"くん"をつけている)
千歳朔の隣には西野明日風はいない。
とびきりの笑みがにっと浮かんだ。
「━━来てよかったっ」(p.334)
いまの俺にそんな資格はないから、都合よくあの頃に戻ったふりをして━━。(p.335)
明日風はわかっている。でも……。
朔はいまを見ている。
どこまでも、どこまでも……。
水着、浴衣も穢れてほしくない感がすごい。
次、陽
これからも隣にいてくれるつもりなんだな、陽は。(p.93)
どこまでもいっしょに走り続けていたい。
そう思える相棒だから。(p.94)
陽はにっと笑った。
眩しさに目をつむってしまわないように、精一杯にっと笑い返す。(p.308)
心からの笑顔ではない。朔は先に一歩踏み出す。
隣じゃない。大切だから。朔が動いた。でも、陽が動けばなにかが変わるかもしれない。
悠月
七瀬がやるせないほど丁寧に笑った。
「ごめんね、そんな顔させて」(p.107)
どちらもちゃんと心から笑えていない。悠月は気づいている。似てるから。
やっぱり似ている俺たちは、こうやって互いの心に片足だけ踏み込んだままで━━(p.107)
少しだけ。ちゃんと隣ではない。
海人
「わかった! じつは好きな子いるとか!?」
「いや」
海人がにっと気持ちよく笑った。(p.189)
好きな人に言われたらそりゃうまく笑えない。
「━━大切な友達だからこそ、無理やりふたりに割り込んででも勝負すっかな」(p.191)
にかっとしたその笑顔は、なんだかとても眩しかった。
私も見習うように笑う。
夕湖へ贈る言葉。夕湖は海人を見習う。
優空は朔を真似る。
ふたりに割り込むというのは、夕湖的に朔と優空だろう。
「なんだっけ?」(p.192)
覚えてない。千歳朔も夕湖のこと覚えてない。
「いつかあいつの想いみたいなのと、正面から向き合ってほしいんだよ」(p.312)
「わかったよ。男の約束だ━━」(p.314)
笑顔で言った夕湖の想いにちゃんと朔は応えている。
和希
「━━俺はその子が他の男に惚れるところを見て惚れたんだ」
めったに見せない表情でふあっと笑った。(p.260)
「━━本気で惚れても惚れてはもらえないだろうからこのへんで、ってね」(p.261)
湯けむりの奥でスカした笑みをこちらに向けた。
相手は悠月。いつもどこか取り繕っていたり、線を引いている和希。
夕湖
━━大切な友達、ばっかりだ。(p.183)
夕湖もわかっている。
「━━朔には、いつだって私が大好きになった朔のまんまでいてほしいな」(p.128)
SSとかでもわかるとおり。一年生のときも含めて朔は愛想笑いとか誤魔化そうとする、道化を演じたりする、そんな朔を好きになったから。
窓から射し込む夕陽が、黒板にきれいな三角形を描いている。(p.412)
夕湖の告白からのこれ。ずっと続いてほしい時間。終わらせたくない壊したくない。
いつだって、そんなふうに俺の背中を押すんだな。(p.416)
夕湖の願いと海人との約束。だから、朔はそれに応える。隣にいるのが夕湖だと言えばこのずっと続いてほしい楽しい時間が終わってしまうから。
「俺の心のなかには、他の女の子がいる」(p.417)
精一杯、ありったけで、くしゃっと笑ってみせた。
朔は隣とは言ってない。でも嘘偽りなく、自分のこころを。
心のなかには内田優空がいるから。(たぶん)
優空
「しくしく」
大げさに泣き真似すると、優空は俺の腰から右手を離し、背中をとんとんと叩いた。
「大丈夫だいしょうぶ━━」
「あ、それ適当にはぐらかすときのやつや」(1巻 、p.101)
沈みかけた夕陽が━━(途中省略)━━作りものみたいに美しいグラデーションを描く。
長く伸びた影を引き連れて寄り添う俺たちのシルエットは━━。
それは今日の夕焼け以上に作りものくさくて、とても悪くない。
このまま優空とふたりで、どこまでも走っていけそうだった。(1巻 p.102)
気づきました? そう。5巻にも似たようなのがあるんです。
「私を見つけてくれた朔くんの心のなかにいるのが━━」(5巻 p.428)
「だけど、もしも、あなたがひとりぼっちでうつむいているのなら。あのときの私みたいに、声を押し殺して震えているのなら。……月の見えない夜に、迷い込んでいるのなら。」(p.429)
本当にあなたはそうなの? 向き合ってみてって問いかけてるようだ。
月の見えない夜=朔(新月)? 青空の中に浮かぶ月?
「━━そのときは、誰よりも朔くんの隣にいるから」
━━優空が、俺の前に立ち
「大丈夫だいしょうぶ」(p.429)
あれ? いまじゃない? いまは夕陽が沈もうとしているんだけど。隣じゃなくて前?
あれ? これ、適当にはぐらかすときのやつや。でも背中とんとんしてないな……口癖か?
朔に言ってるようで自分に言い聞かせてるようにも取れる。
「ちょっと練習するけど、ごめんね?」(p.430)
なんだ。本番じゃないのか。
遠く沈みかけている夕陽が━━(途中省略)━━あの日の花火のように。(p.365)
そうしてまるで最後の花火みたいに、あの大きな錦冠菊みたいに(p.411)
1巻の優空はつくりもの。5巻の夕湖は本物。
コミックスSSを読み返すとヤバい。
『窓の外』『家の外』
「━━とびきり冴えたシチュエーションで」(4巻 p.51)
冴えたシチュエーションか? 違う。まだそのときじゃない。優空が隣にいるときじゃない。
そんな日(本番)が来るんだろうか……。
まるで小さなこどもみたいに、いつまでも泣きじゃくっていた。(5巻 p.430)
泣きたかった。戻りたかった、あの頃へ。でもいまを見てたから。だからいまだけはあの頃のように。
夕暮れを背負いながら、優空が黄色いたんぽぽみたいに微笑んでいた。(p.427)
たんぽぽの花言葉は「愛の神託」「神託」「真心の愛」「別離」。
だれかかが託した想いを綿毛のように誰かに届ける。
太陽に向かって伸びる。
思い返すと優空のたとえでアネモネっても出てきました。秋に結実したタネは、やはり風によって運ばれることで繁殖してきたそう。(たんほぽも思い浮かぶね)
全般的な花言葉の意味は「はかない恋」「恋の苦しみ」「見放された」「見捨てられた」
赤いアネモネは「君を愛す」
ギリシャ神話と関係があるようです。調べてみてくださいね。
優空は朔の真似をする。だからたぶん……。
「千歳くんがそばにいてくれると━━」
「いられるだけはいますよ、友達だから」(p.121)
そばに友達としている。隣ではなく。隣としてはなにでいる?
【おしまい】